普及指導員が現場で活躍する日々をレポート
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◆2023年3月

島根県
長妻武宏

令和4年度西部地区肉用牛振興大会を開催

2023.03.31

 コロナ禍がつづきますが、今回2年ぶりに、益田市で肉用牛振興大会を開催することができました。


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開会挨拶(会場の様子)


 大会では、昨年度、「第50 回家畜人工授精優良技術発表全国大会優良事例報告」(日本家畜人工授精師協会主催)で西川賞を受賞した「凍結精液融解温度における授精受胎率の一考察」の京村氏による発表、今年度島根県代表となった清本氏の発表・報告がありました。


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清本氏の発表の様子


 また、「第12回全国和牛能力共進会」の成果と、これからの肉用牛・和牛振興の講演がありました。
 普及からは、ドライTMR飼料の給与実証結果の報告等を行いました。
 久しぶりに顔を合わせての開催となり、意見交換ができて良かったと思います。

長妻武宏

島根県の長妻です。畜産が専門の普及員ですが、過去には、イノシシの研究などもしていました。島根農業の応援団員になりたいと思っています。

大分県
塩崎洋一

これが普及活動か、と問われれば・・・・

2023.03.24

 以前、広域普及員時代に、南部振興局管内の肥育農家さんの牛舎を改造したことがありました。その時に手伝ってくれたのが、今の事務所で一緒のO普及員です。
 彼女が普及活動の事例報告をする際に、その牛舎改善事例を取り上げました(広域の後に南部振興局へ異動となり、その時の環境改善は紹介しましたが、その前段でのことです)。
 ところが、その発表を聞いていた当時のエラい方(普及職員ではない方)が申されたのです。「これが普及活動か」と。


 行政では、農業の粗生産額拡大を目標に掲げます。一方、農家さんは、市場での単価相場の波に負けずに頑張っています。生活や人生がかかっていますから。その現場と行政の狭間に立たされた普及員・普及事業、という構図の中から一言言わせていただけば、次のようになります。
 以下は、そのエラい方に直接メールした趣旨です。


「この農家さんは認定農業者で、管内で唯一の肥育農家である。自分の父親の知り合いでもあったので懇意にしてもらっていたが、段々と年も重ね、後継者もいない。そうした事情から、経営継続の意欲が薄れてきていた。そこで、こちらがそうしたお手伝いをすることで、少しでも作業が楽になり、経営が継続されるならばどうであろうか。経営を止めれば、少なく見積もっても数千万円の粗生産額が減少することになる」


 というような内容だったと思います。
 実際、この農家さんはその後、改善した牛舎(牛房)で仕上げた肥育牛で、県の枝肉共進会で2位を取り、また、和牛全共でも県代表に選出されました。


 もしもあの時、ご本人が弱気になっていた時に普及として「現実に」何もしなかったら、どうだったでしょうか。「現実に」というのは、言葉の励ましではなく、実際に何かの行動でお手伝いする、ということです。


 翻って今、管内の農家さんの若い夫婦が4人の子育てに奮闘しながら、親父さんから引き継いだ牛舎で、人生の荒波を突き進んでいるわけです。
 若手であるが故に集落での役務に翻弄され、田舎であるが故に子供の送迎に時間をとられながら、50頭の牛で生活をしています。そこに、以前担当していたK普及員が、また舞い戻ってきました。

 建築資材も飼料も倍に跳ね上がった経済情勢のまっただ中、これまた親父さんが現在地とは別に買っていた土地に移転して、もっと気持ちよく肉用牛経営を展開したいという場面に、私は出くわしたのです。

 色々な普及活動がありますが、K普及員の「塩崎さん、あの農家を何とかしてやりたい」との思いから、経営移転するまであと1年はかかる、その間に少しでも多く改善できるところを改善して、経営体力を付けさせたい、そして、資金繰りを有利にしたい、とのねらいがあっての普及活動でした。


 「私がたまたまできることだから」「他には誰もできないから」と言われればそれまでですが、経営者の「運」といいますか、その時に誰と巡り合わせるか、これは普及であっても、市町村担当者であっても、県の行政担当であっても、まさに、巡り合わせです。時が過ぎて初めてわかるのが「あの時、あの人がいなかったら、こうはなっていなかった」という事実です。

 そう考えれば、この農場での牛舎環境改善活動は、私が自身の普及活動の第1幕を令和3年度で閉じていなければ、なかった活動となります。
 もっと遡れば、私が普及員になっていなかったら、こんな場面はなかった。もっと遡れば、私が肥育農家に生まれて、経営再建を目の当たりにしてなければ、こんな普及員になっていなかった、もっと遡れば・・・・、ということなのです。
 そして、自分がいま行った結果で将来、この農家さんがすばらしい経営を確立していたら・・・・。そう考えれば、巡り合わせ、経営者の「運」としか言えませんが、経営者の運を左右する、良い方に左右していく「縁」となる普及員でありたいものです。


 長くなりましたが、最後に、秘密にしていた古いスレート屋根の掃除の方法です。


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スレート上の、並んだ釘のきわに長い垂木を置いて、そこに脚立を乗せます。スレートに対する設置面積を広げれば、体重が分散して、割れないのです。そして2本の脚立を交互に移動させながら、効率よく作業します。スレートの上を歩く際、釘の上を踏むのは常識です


 今さらながらですが、普及活動の重点対象農家さんの信頼を得るため、その信頼を強くするためにこそ、のやり方ですが、要は、「自分のもっているスキル、人生観、何もかもを総動員してやる」ということです。OODAループ思考での「世界観」かと思います

塩崎洋一

昭和63年に大分県で普及員として奉職。 令和4年3月に早期退職して農業に踏み込み始めたが、普及現場の要請により中部振興局を舞台に、普及活動の第二幕が上がった。臼杵市在住。

blog_fukyu_gotom_f.jpg 大分県
後藤美智子

今年の私は去年の私よりもうまくなっている

2023.03.22

 せん定の季節です。今年は、昨年秋の少雨にはじまり、1月下旬の寒波の影響で、樹が弱っているため、4月以降に花を見てからせん定(間引きせん定中心)しましょうと、巡回と講習会時にお話ししています。


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右 :カボスの樹 / 左 :枝の向こうに1年生がいます


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左 :つぼみが膨らむ / 右 :果こう枝から出た発育枝


 樹勢の弱った樹では、せん定はまだまだ先ですが、ぶどうの時と同じく、生産者にお話しし、園地の様子を見ながら、営農指導員1年生と普及員1年生とで、実際の圃場でカボスのせん定を行っています。2人とも結果習性(花がつきそうな枝があるのか)を確認し、間引き中心で行うせん定が身についてきているように感じています。


 ハウス栽培では、もうつぼみがふくらみ、一足早い春がやってきています。
 私自身、今年は去年よりもせん定がわかるようになっていると感じています。早道、抜け道はありません。
 今回の投稿の最後に、過去の大先輩の技術習得の道を照らしてくれる言葉を引用し、これからもせん定を続けたいと思います。

"せん定は一種の技術であって、熟練を要することはもちろんであるが、カンキツ樹自体がおのずと教えるのに従うのが最もよい。自然を無視してせん定整枝をすると、本来の性質が乱れてせん定の方法もむずかしくなる。往々特殊なせん定法が案出され、栽培家を迷わせているが、極端な方法は避けなければならない。それゆえカンキツをせん定するにあたってはまずその性質を十分に知得し、さらにせん定の本来の目的に反しないように心がけることが肝要である。しかし一応のせん定はだれでも容易にできるのであるから、あまりむずかしいものと考えないで、他人まかせにせず、枯枝を切るとか、光線が樹内にはいるように密生した枝を間引くなど、わかりやすい所から入門しおいおいと要領を習得するのが最良の道である。"

出典:改訂新版『カンキツ栽培法』農学博士 岩崎藤助 朝倉書店



後藤美智子

大分県豊肥振興局にて“果樹に関わる人を地域に増やす・地域にやりたい仕事をつくる”を目標に普及活動に取り組んでいます。転職して公務員(農業)になりました。普及員は6年目です。

大分県
塩崎洋一

久々の環境改善③

2023.03.15

 牛舎での滞在時間が長くなると色々気づくわけですが、これまた気がついたのが、牛さんが水を飲む風景です。
 これまで色々と工夫したそうですが、どうにも牛さんが壊してしまう給水設備とのこと。
 今は、ホースで水槽に水をためながら、牛さんが水を飲むのを気にしつつ水を止める、という拘束された作業になっているようです。


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親父さんの時代からの水飲み場も、機能不全を起こして人力給水では、この頭数規模、作業性が悪いことこの上ないのは明白です


 長年農業をしている方はそうでもないのですが、他に就職してからUターンした後継者や非農家出身者の場合、牛さんの気持ちで設備を作れず壊されてしまう、というところが少なくありません。


 「牛さんの気持ちで」というのは主に、
①とにかく頑丈に
②釘や木材の尖ったものを出さない
③棒状の出っ張りなどに鼻ぐりや耳標などが引っかからないようにする
④牛さんの口や目の高さや首の幅を考慮する
などに注意して設備を作る、ということです。


 これは、人間の側は作業性向上、牛さんの側からはストレス軽減などによる生産性の向上に繋がるのです。
 つまり、いつでも好き放題に水が飲めるか否かは、牛さんにすれば超重大なことなのです。
 この農場の水は市水を使うため、水道代を考慮して、改善してみました。


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牛舎に転がっていた桶を加工しています。K普及員はまさに「昭和の普及員」かもしれません。こうした作業での手際の良さは、脱帽です


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牛房の柵の外側にホールタップをつけて、メイン水槽を設置


 桶の底をホースで繋げば、サイフォン式で一方の桶にも水が溜まります。水面の高さは同じなので、牛さんが飲めば、両方の水面が下がって、水が出てくる仕組みです。この方式の利点は、柵の内側の桶だけを掃除しやすいこと。
 2つの桶が離れて高さが違っても水面は同じ高さなので、メインの水槽を工夫すれば、おおよそどんな場所でも作れます。水道がない場所でも、大きなポリタンクをメイン水槽の横に少し高めに設置すればOK。

塩崎洋一

昭和63年に大分県で普及員として奉職。 令和4年3月に早期退職して農業に踏み込み始めたが、普及現場の要請により中部振興局を舞台に、普及活動の第二幕が上がった。臼杵市在住。

blog_fukyu_gotom_f.jpg 大分県
後藤美智子

気づきの種をわけてもらう

2023.03.13

 視察研修のその後、みなさんはどうしているでしょうか。
 私は、実は視察が苦手です。視察は視察先の方の先駆的な取組を聞かせてもらえる貴重な時間です。そのため、必ず1つ以上、自分の産地に持って帰った種(アイデア)を根付かせるぞと、視察前も視察後も自分の肩に力が入ります。準備段階の調査も念入りに行い、エネルギーを使うという意味で、視察は緊張するし、苦手です。
 かけた熱量の分、得るものはとても大きいです。参加したメンバー同士で意見交換を行う良いきっかけにもなります。


 昨年度の笠間市のクリの取組の視察では、"地域課題解決手法の習得"を目的にお伺いし、たくさんのきっかけと気づきを持ち帰らせてもらいました。


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 :笠間市のクリ
 :すばらしすぎたおもてなし


 今年は、お聴きしたお話、いただいた資料、実際の取組をお手本にしながら、私たちの地域でも種を蒔くことができました(わたしはブドウ、後輩はクリ)。
 過大評価ではなく、できた、と私は感じています。これをゆっくりと笠間市のみなさんのような取組に、地域のみなさんと関係機関一緒に育てていくところです。


 視察を受け入れる側の場合、あのときの皆さんは今、どうしているだろうかと考えることがあります。
 伺う側だった場合は、その後を伝える機会があればと思います。
 しばらく時間が経ちましたが、笠間市役所様、JA常陸様、笠間地区栗部会、そして視察をコーディネートしてくださった笠間地域農業改良普及センター、園芸研究所、何より生産者の皆様、あのときは本当にありがとうございました。
 悩む度に、あの日お聴きした皆さんのお話と顔を思い出します。よちよち歩きの私たちの取組を励ましてくださったことが、いつも背中を押してくれます。


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 :担当地域で貯蔵試験をしたクリを焼き栗に
 :貯蔵クリの腐敗調査


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ぶどうをはじめてみたい方向けの講習会


 視察に苦手意識はあります。でも、視察は実りの多い活動です。
 次の良い機会に巡り合ったとき、しっかり種をつかめるよう、日々、自分自身という土を育てていきたいです。

後藤美智子

大分県豊肥振興局にて“果樹に関わる人を地域に増やす・地域にやりたい仕事をつくる”を目標に普及活動に取り組んでいます。転職して公務員(農業)になりました。普及員は6年目です。

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