出藍の誉れ
2022.04.27
桜が咲き誇った3月、この普及指導員ブログでも大先輩である塩崎さんが、ご退職されました。これまでも技術の実証や普及に努められてきた先輩は、「やりたいことがあるんだ」と前向きなお話をされながら新たなステージへ踏み出されました。さらなるご活躍を心から願っています。
今回は、そんな塩崎さんと一緒に、経営指導で果樹の生産者のところへ伺った時の思い出を投稿します。
対象の方は、果樹園より上にある見通しのよくない雑木林の金網柵の隙間をぬって、鹿が侵入してくることに大変苦慮されていました。労働力も限られるため、広い雑木林の草管理は容易なことでありません。
そんな話をしていると、塩崎さんは園地の周囲を歩いて環境を確認した後、
「牛を飼いませんか」
と生産者に提案しました。大分県は、レンタカウ制度といって放牧にトライしてみたい生産者に牛を貸し出す仕組みがあります。放牧の良さ、難しさを軽快に説明され、心動かされた生産者の決断により、その年の夏にレンタカウの実施が決まりました。
そこからは、果樹担当の私→畜産担当の普及指導員、畜産試験場と協力し、放牧を実施します。仕事をする上で、関係者、関係機関の『連携』が重要と説かれますが、『連携』は"必要"にかられれば声高にせずとも、するするとすすんでいきます。
試験場からやってくると、牛たちは夏から秋にかけて順調に草を食べ尽くし、予定より早く試験場に帰っていきました。
牛たちが健康に過ごせたのは、放牧初トライだった生産者のご努力のたまものです。フォローアップした畜産の普及指導員の細やかな対応も大きかったです。現在、牛たちがきれいにしてくれたことにより、生産者は継続して園地の草管理を続けられています。
ちなみに最初のアイデアを出したところだけが、塩崎さんのお仕事だったわけではありません。今回、放牧にトライしたことがなかった若手普及員へ「○○さんに相談するといい」、「自分が放牧を現地で実施したときはこうだったよ。電柵の設置方法はこうやったよ」と、背中を押したり支えたりしてくれました。
塩崎さんが去られた後も地域に、生産者に、私のような普及員に、実際の現場と考え方が残っています。塩崎さんが重ねた色にさらに新しい色を重ね、"出藍の誉れ"となりたいです。