普及指導員が現場で活躍する日々をレポート
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◆2022年4月

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後藤美智子

出藍の誉れ

2022.04.27

 桜が咲き誇った3月、この普及指導員ブログでも大先輩である塩崎さんが、ご退職されました。これまでも技術の実証や普及に努められてきた先輩は、「やりたいことがあるんだ」と前向きなお話をされながら新たなステージへ踏み出されました。さらなるご活躍を心から願っています。
 

 今回は、そんな塩崎さんと一緒に、経営指導で果樹の生産者のところへ伺った時の思い出を投稿します。
 対象の方は、果樹園より上にある見通しのよくない雑木林の金網柵の隙間をぬって、鹿が侵入してくることに大変苦慮されていました。労働力も限られるため、広い雑木林の草管理は容易なことでありません。

 そんな話をしていると、塩崎さんは園地の周囲を歩いて環境を確認した後、
「牛を飼いませんか」
と生産者に提案しました。大分県は、レンタカウ制度といって放牧にトライしてみたい生産者に牛を貸し出す仕組みがあります。放牧の良さ、難しさを軽快に説明され、心動かされた生産者の決断により、その年の夏にレンタカウの実施が決まりました。

 そこからは、果樹担当の私→畜産担当の普及指導員、畜産試験場と協力し、放牧を実施します。仕事をする上で、関係者、関係機関の『連携』が重要と説かれますが、『連携』は"必要"にかられれば声高にせずとも、するするとすすんでいきます。


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畑を見下ろす牛2頭(7月)


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放牧した後の様子(3月)


 試験場からやってくると、牛たちは夏から秋にかけて順調に草を食べ尽くし、予定より早く試験場に帰っていきました。
 牛たちが健康に過ごせたのは、放牧初トライだった生産者のご努力のたまものです。フォローアップした畜産の普及指導員の細やかな対応も大きかったです。現在、牛たちがきれいにしてくれたことにより、生産者は継続して園地の草管理を続けられています。


 ちなみに最初のアイデアを出したところだけが、塩崎さんのお仕事だったわけではありません。今回、放牧にトライしたことがなかった若手普及員へ「○○さんに相談するといい」、「自分が放牧を現地で実施したときはこうだったよ。電柵の設置方法はこうやったよ」と、背中を押したり支えたりしてくれました。


 塩崎さんが去られた後も地域に、生産者に、私のような普及員に、実際の現場と考え方が残っています。塩崎さんが重ねた色にさらに新しい色を重ね、"出藍の誉れ"となりたいです。

後藤美智子

大分県豊肥振興局にて“果樹に関わる人を地域に増やす・地域にやりたい仕事をつくる”を目標に普及活動に取り組んでいます。転職して公務員(農業)になりました。普及員は6年目です。

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後藤美智子

春の心はのどか

2022.04.11

 どうして柿の木は大きくなってしまうのでしょう。
 大きくなった柿の木は収穫しにくくなり、カラスのえさになってしまいます。また、落ちた柿はイノシシを寄せる餌になります。畑に鳥獣害が広がるため、鳥獣害対策として、まず『収穫しない果樹は伐採すること』とされています。
 

 3月に入り、かぼすのせん定のご相談や定期巡回の中で、管理不足の柿の木があると、鳥獣害対策として整枝の助言を行っています。亜主枝の位置まで低く切る『カットバック』です。


 私がはじめて柿の木をカットバックしたのは、普及員1年目の年です(私は34歳で普及員デビュー)。手法として知ってはいましたが、いざ柿の木を前にするとすぐに決断できません。そこで、総括に現地から電話をして相談しました。今でも敬愛する上司は、私にこのように助言をくれました。
 「あなたが果樹の技術者として必要だと思うのなら切りなさい。大丈夫」
 生産者にも普及指導員にも技術者として尊敬されていた大先輩に、「技術者」と呼ばれたことは1年生の私の心を強く押してくれました。そして、ばっさり、カットバックします。その例を参考に生産者もカットバックを行い、翌年は収穫しやすい園地に生まれ変わりました。私が柿の木のカットバックを提案する際の心の中には、今もずっと総括の言葉があります。
 

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カットバック前(左)とカットバック後(右)


 私自身がそうだったように、悩む生産者方が整枝・せん定が行えるような言葉をいつも考えます。これは、コーチングです。もし、この記事を読んで、柿の木を整枝と思った方がいらっしゃれば、応援しています。
「あなたが必要だと思ったのならぜひ切ってください。大丈夫です!」

後藤美智子

大分県豊肥振興局にて“果樹に関わる人を地域に増やす・地域にやりたい仕事をつくる”を目標に普及活動に取り組んでいます。転職して公務員(農業)になりました。普及員は6年目です。

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後藤美智子

心理的安全性を醸成する

2022.04. 4

 新規就農者の方の技術習得をすすめるために、現地の圃場をお借りして栽培管理実習を計画し、実施しています。
 現在の私の対象者はぶどうの方なので、2月にせん定を行いました。これからご自身のぶどうの樹を育てていく中で、ちょっと先の生育状況の樹の様子を観察することはとても有意義だと、私は考えています。そして、仕事の9割は段取りです。作業は『点』ですが、管理は『線』であり『面』です。


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左 :研修圃場で育てたシャインマスカット / 右 :初夏作業の様子


 一緒に研修(作業)を行いながら、少しずつ質問していきます。最初は今年の取組状況と技術に関することでした。次に、借り入れを行っているので、5年後の展望を聞きました。農業をはじめた今は、家族経営が主体となるため『家族の理解状況』、『雇用の確保(対象、賃金設定)』、雇用に必要な『チームマネジメント』の話をしています。これは、『技術と普及』2月号にも掲載されていた『カウンセリング』です。対面だとかしこまってしまいますが、圃場で作業をしながらだと私自身の技術も見てもらえて、信頼を高めやすいと考えています。


 この日は、マネジメントの流れで、年上の方との接し方についての話になりました。私は、この仕事を始めたばかりの頃、飲み会の場で先輩から「年上の方(上司)に、フランクに接しすぎている。相手もそれを了解しているかもしれないが、外から見たときには良く思われないこともある。気をつけた方がいい」と助言されたことがあります(これは今でも気をつけていることです)。この話をすると就農者の方から「私も過去、職場の先輩から飲み会で同じ事を言われたことがある」と話されました。それから、お互い顔を見合わせて、"あなたもか"と笑い合って再度反省し、仕事の中で活かそうと話し合いました。


 他者と接する中で、過去を思い出し、発見することで私自身もカウンセリングを受けているのだと感じています。相手に話してもらいやすい雰囲気づくりを留意し、今後も活動していきたいです。

後藤美智子

大分県豊肥振興局にて“果樹に関わる人を地域に増やす・地域にやりたい仕事をつくる”を目標に普及活動に取り組んでいます。転職して公務員(農業)になりました。普及員は6年目です。

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