わたしの春暦
2021.04.23
大分県豊肥振興局生産流通部の後藤美智子と申します。
園芸分野、主に果樹の産地振興を担当しています。塩崎先輩からのバトンを引き継ぎ、普段の普及活動を中心に執筆します。よろしくお願いします。
私の勤務地である竹田市は、今年、昨年より少し早い春を迎えています。
写真は、特産品である香酸柑橘類『カボス』の小さなつぼみです。
新芽もつぼみも紫色がかっているのが『カボス』の特徴です。
私は現在、昨年『着果』の少なかった園地で、園主さんと一緒に『花見』剪定をおこなっています。言葉の通り、『花(つぼみ)』が見えるようになってから行う剪定です。
かんきつ類を担当していると生産者、一般の方問わず、
「今年は、裏年(果実が少ない)ですか、表年(果実が多い)ですか?」
と尋ねられます。質問者が生産者だった場合、私は
「そもそも、花が咲きそうな枝はありますか? 昨年の春芽はどうでしたか?」
と問い直します。長く栽培をしていても、"花がどこに咲くのか"をきちんとつかめていない方はいるため、確認をします。
かんきつ類は、前の年に出た『春の芽』に花がつきやすい習性をもっています。それに加えて『カボス』は、『10~15cm以内』の短い春の芽に着花しやすいのが特徴です。たくさん花が咲くと、芽が少なくなります。そうすると、次の年は着花する場所(前年の春の芽)が少ないので、果実が少ない裏年になります。樹に何も手を加えないと、そのような"ならない裏年・たくさんなる表年"を繰り返しやすくなります。
最初の『花見剪定』に戻ります。生産者とも剪定をしながら、『結果習性(どこに花が咲くのか・実がなるのか)』を確認しています。
樹を切ることは大事です。切らぬなら、枯れ枝だけだったとしても切った方が良いです。ただし、果樹栽培では、果実を収穫しないことには話がはじまりません。重要なのは、盆栽のようなきれいな形ではなく、『実がなる(花が着く)』ように観察し、手を入れることです。
剪定を一緒に行いながら、生産者とお話します。
話をしながら確認とこの先の段取りを見通します。
「花が見えますね、花がたくさんありますね。こういう短い枝に花がつきますね。芽もほどほどあるから、来年も花がつきそうですね。収穫の労働力の算段もつけないといけないですね」
何より、基本である"どこに花が着くのか"を言葉にすることが私の春の仕事です。