北国でも暑さ対策してるのです(最終話)
2014.06.30
暑さ対策の話で散々ひっぱっておいて、本格的な夏を迎えてから最終話を書くってどういうことよ? とか言われる・・・・・ことはないと思いますが、暑い地域なら、どこでもやっているような対策に、青森県も最後は行き着くのです。
まぁまぁ、なにはともあれ、最後までお付き合いください。
【前回までのあらすじ】
年々厳しさを増す夏。地面に井戸水を流して、暑さで夏場に咲きにくくなったアルストロメリアをガンガン咲かせようと奮闘する普及指導員の私。電気ケーブル用の管、CD管に井戸水を流して、なんとか予算内でほ場を冷却するところまでこぎつきました。
効果は予想を上回り、冷やされた地面からピョコピョコとアルストロメリアの花芽がでてきます。
【ここから本題】
「さぁさぁ、皆さん入ってください。」
夏の暑い日、そういって私がハウスに招き入れたのは、管内のアルストロメリア生産者と関係機関の人々・・・。井戸水で冷却された地面から数え切れないほどのアルストロメリアの芽(シュート)が出て、高温にも関わらず、ハウス一面、まさにお花畑! 生産者からは、賞賛の声があがるはずです。
ハウスへ入った生産者らの「言葉にならないような言葉」は、
「これは、まさに、すごい!」でした。
そうです。すごかったのです。
花と蕾が高温障害で歪んで「グチャグチャ」なのです。
井戸水で冷却され、「おっ! これは、快適な環境!」と勘違いして、顔を出したアルストロメリアの花芽は、開花する1m数10cmのところで、なんともすごい高温にさらされていたらしいのです。
こんなのや・・・(左)こんなの・・・(右)。暑さで変形してます
あわててハウス内の温度を測っていた「データ記録装置」からデータを抜き出して調べてみました。すると、なんと、花が開花する付近の気温は、時折40℃近くあるではないですか!
実は、この年(平成24年)は7月の終わりから、青森県はかつてないほどの猛暑に遭遇していたのです。さらに、その後の地温のデータを追跡すると、想定していた地温20℃をはるかに越え、25℃を越える日が何日も出現しているではないですか!
これでは、花がまったく売り物になりません。生産者も私も、がっかりです。
実は、これまで青森県で「厳しいな」と思う暑さは、ネブタ前の数日くらいで、お盆前にいくらかの簡易な遮光をすれば十分暑さがしのげていたのです。この暑さは、まさに未体験ゾーンでした。
肩を落としてばかりはいられません。
その場に居合わせた生産者と私達は考えました。
「熱くなった地面を冷やせばいいって考え方が、根本的に間違っているんじゃないか?」
そうなのです。よくよく考えてみれば、青森県は、かつてないような猛暑に、今後も繰り返し見舞われることでしょう!
ですから、
「青森県は涼しい。だから熱くなったものを冷やせばいい」
という考え方は、根本的に間違っていたのです。
そこで、こうなりました。
「地温も気温も下げきれないなら、始めから上がらないようにすればいい!」
そんな訳で、ハウスの外側に、遮熱ネットを張ることにしました。
最近の高温対策グッズは、進化しましたね。
「高い光反射効率」「過熱化を抑える」「涼しい栽培環境」とカタログに書いてます。
サンプルを透かしてみれば、熱は遮るものの、光は結構通しているようで明るいです。
前年の失敗にめげず、平成25年は、幾種類かの遮熱ネットを、部会長のハウスに実際に張ってみることになりました。ハウス内の温度上昇を回避しつつ、さらに冷たい井戸水で地面を冷やすという作戦です。
日本の南の方の産地では、遮熱ネットと地中冷却は、至極当たり前のことなのでしょうけど、青森県では、そんな対策をしなくても花が収穫できていたのです。
これまでの青森県の涼しい夏に、心から感謝です。
この後も、青森県に適した品種の試験や、収穫後の後処理剤の検討、害虫発生を予測するトラップの設置、予防に力点をおいた防除暦の作成等々、生産者、JA、試験研究機関と普及指導員が協力して、さまざまな改良・改善を行ってきました。
みんなのそんな苦労と努力の積み重ねで、平成25年の販売額は、前年より3割も伸びました。そして、担当になった私が3年前からずっと願っていた青森県の農業専門誌「あおもり農業」の表紙を飾ることができたのです。
【追記】
今回のブログは、「暑さ」をテーマに限定して書いていますが、現場では、吹雪で凍り付いたヒートポンプ室外機の凍結対策やら、青森の気候に合った作型への変更、またまた、冬場のネズミ対策等々さまざまな対策を講じてきました。
このテーマは今回が最終回ですが、生産の現場に終わりはありません。生産者の皆さん、試験研究機関、JAの皆さん、次は○○○億円を達成して、宇宙旅行へ行きましょう!
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