普及指導員が現場で活躍する日々をレポート
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◆2008年10月

埼玉県
鈴木知子

賞をとろう

2008.10.30

 日本人がノーベル物理学賞、化学賞を相次いで受賞!不景気な暗いニュースが多い中、この話題は我々日本人に、喜び、明るさ、誇らしさ、自信・・・をもたらしてくれました。


 農業分野でも、市町村レベルから全国レベルまで、各種の賞が設定されています。

 各地で行われる農産物共進会。金賞・銀賞・銅賞や特別賞などの札がついた農産物がずらーっと並んでいる様子は、ニュースでお目にかかることも多いでしょう。
 農産物を一堂に集める共進会のほか、審査員が畑を見て回り生育中の農産物の評価をする立毛共進会というものもあります。普及指導員は審査員を頼まれることが多く、これからの季節、あちこちの審査会へ出かけていきます。


植木の立毛共進会審査風景、試験場の職員と。遠くに丸い屋根の埼玉スタジアム  経営コンクールの推薦書作成のため市の職員と打ち合わせ。農家の経歴などを確認
写真 
左 :植木の立毛共進会審査風景、試験場の職員と。遠くに丸い屋根の埼玉スタジアム 
右 :経営コンクールの推薦書作成のため市の職員と打ち合わせ。農家の経歴などを確認

 
 一方、農産物そのものではなく、農業経営の内容を評価する賞もあります。経営者の考え方、生産技術の改善、コストや労働の軽減、環境への配慮、地域への貢献など、そしてもちろん売上高及び所得の額について審査されます。こういったタイプの賞については、普及指導員は審査員ではなく、応募書や推薦書の作成段階で関わりを持つことが多いです。

 
 賞をもらうことは生産者にとって非常に喜ばしいことであると同時に、地域の活性化にも役立つことだと思っています。審査にしても、書類作成にしても、生産者の今後の励みになるよう精一杯取り組んでいます。


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鈴木知子

埼玉県さいたま農林振興センター普及部の技術普及担当で、主に花植木と経営を担当しています。 埼玉県では女性農業改良普及員の1期生です。 農家と、若手の普及指導員が、夢を持って活動できるように支援していきたいと考えています。

長崎県
尾崎哲郎

秋作メロンのできはいかが?

2008.10.27

 全国的にメロンの作付けは減少しており、長崎県においても同様な傾向です。
 壱岐は古くから春のアムスメロンを主力に、夏・秋作のアールスメロンと孤軍奮闘している産地です。

地上部の状態  左:ベネチア、右:ミラノ。 ベネチアは葉が黄化し、かなりくたびれた状態である

 秋作のアールスメロンは植付時期が8月であり、台風被害にあう危険性が高い作型です。品種は「ベネチア」が主流ですが、より品質が高いネットメロンを求めて、今作より新品種の「ミラノ」を2戸の農家に試作してもらいました。

 10月21日に、メロン部会長である深見氏圃場にて「ミラノ」の生育・収量調査を実施しました。今年は心配した台風襲来がなく、天候にも恵まれ、盆明けから順調に気温が低下したおかげで、着果状況も良く、果実が大玉になりすぎない、2L等の規格にあった、りっぱなメロンができました。


 メロン担当の山中係長と、「ミラノ」と「ベネチア」の生育調査(葉数、着果節位:(果実がついている節数)、草丈、茎葉重)と果実調査(果実重、糖度)を実施しました。

 写真でわかるように、「ベネチア」にくらべ「ミラノ」は茎葉がしっかりしており、果実も肥大し、ネットの盛りなどが良好でした。写真 右:ベネチア、右:ミラノ。 ベネチアは葉が黄化し、かなりくたびれた状態である 


 その日の午後には、壱岐地域の園芸担当者の会議がありましたので、2品種のメロンを紹介し、試食していただきました。
 評価は「ミラノ」が外観がよく、食味は「ベネチア」よりコクがあるという評価でした。ちなみに糖度計では「ミラノ」は14.5%、「ベネチア」が14.3%という結果になりました。

左:ベネチア・右:ミラノ。ネットの盛り、緻密さがミラノがよい   同左 果肉の状態
写真 左:1左:ベネチア・右:ミラノ。ネットの盛り、緻密さがミラノがよい / 右:同左 果肉の状態
  

 試作した2名の農家の評価は、管理がしやすく作りやすい、果実の品質が良いという結果を得ることができました。
 10月下旬より販売が始まり、島内および福岡方面への出荷となります。

試食会の風景。奥がメロン担当の山中係長(腰のタオルが渋い)
写真 :試食会の風景。奥がメロン担当の山中係長(腰のタオルが渋い)  

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尾崎哲郎

長崎県壱岐地方局壱岐農業改良普及センターの技術課で野菜を担当しています尾崎哲郎といいます。離島ならではの普及活動や普及指導員としての苦労など紹介できれば幸いです。

岩手県
中森忠義

関係機関や普及センター同士が連携した普及活動

2008.10.24

 私達普及指導員の仕事は、農業経営だけでなく、地域全体(=産地)を対象とし、それらをよりよいものに変えていこうと働きかけることです。


 先日は、隣接する普及センター管内のトウモロコシ畑の調査に同行し、協力して調査を行いました。
 その際は、それらを管轄する行政機関の担当者にも、同行をお願いしました。

 普及組織だけで目的が達成できる場合もあれば、地元市町村やJA、県の他機関(行政機関や家畜衛生保健所等)などの関係機関と連携して、目的を達成しようとする場合もあります。
最近は、地域を対象とした課題も多く、後者の割合は増えていると思います。

 さらに、県下の一普及センター管内で生じている出来事は、他の普及センターでも生じる可能性が高く、効率的な活動を行うため、できるだけそういった情報は共有する必要があり、私たちのような、全県を対象に活動する部所が設けられている都道府県も多いことでしょう。


 この日の調査は、トウモロコシ畑の雑草ならびに、クマの被害調査でした。

雑草・クマの被害による収穫ロスを調査しています  調査後の打合せ(赤いツナギの方は、行政組織の職員さん)
写真 左:雑草・クマの被害による収穫ロスを調査しています / 右:調査後の打合せ(赤いツナギの方は、行政組織の職員さん)

 雑草が繁茂した原因と対策、さらには、そのことによる経営的な損失等は、私たちを通じて県下の普及センターで共有します。

 同じく、クマの被害状況と、考えられる技術対策については、共有をするだけでなく、行政機関を通じて、その対策を行政施策に反映させてもらい、増加する経費に対する補助等を検討してもらうことにします。

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中森忠義

岩手県中央農業改良普及センターの滝沢村駐在で、主に畜産を担当しております。 本県の畜産は、養豚や養鶏もありますが、主に関わっているのは、酪農経営・黒毛和種(肉用牛)の繁殖経営・日本短角種の振興などです。

愛知県
佐光佳弘

今話題の「WCS」を収穫!

2008.10.17

 10月1日と2日、甚目寺町においてイネWCSの収穫作業がありました。
 「イネWCS」とは稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ)のことで、籾が完熟する前のイネを丸ごと収穫し、ロールにしてラッピング、発酵させた後に牛に給与するものです。田んぼで家畜のエサを作るということで、水田の新しい活用方法、家畜飼料の高騰対策として注目されています。

最新のホールクロップ収穫機で収穫 収穫機から放出されたロール 
左:最新のホールクロップ収穫機で収穫 / 右:収穫機から放出されたロール


 栽培されたのは飼料用イネ専用品種の「クサノホシ」で、5月末に田植えされました。
 その後順調に生育し、主食用品種である「あいちのかおり」に比べて穂数は少ないものの、茎が太く、草丈は高く、とてもがっちりしたイネになりました。

ロールをラップマシーンでラッピング  ラップしたロールの大きさは直径1m、高さ80cm
左:ロールをラップマシーンでラッピング / 右:ラップしたロールの大きさは直径1m、高さ80cm


 イネWCSは、管内では今年初めて取り組まれ、一般的に言われているとおりに、施肥量は1.5倍で栽培していただきました。しかし、化学肥料が高騰していて、施肥量が多いと経費がかさむため、施肥量を減らしてもイネWCSの収量が確保できるかどうか、来年試験が必要と考えています。

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佐光佳弘

愛知県海部農林水産事務所農業改良普及課(海部農業普及指導センター)の技術指導グループで、作物担当として仕事しています。 県職員12年目ですが、職場では3番目に若い新米です(職員数は18人)。

長崎県
尾崎哲郎

いちごの花芽検鏡について

2008.10.16

イチゴの花芽検鏡(第1次腋果房:2番果)による栽培管理指導


 20年産のイチゴの定植が9月5日から始まり、15日~20日をピークとして無事終了しました。
 今年は植え付けてから定期的に降雨があり、活着(根づくこと)具合は良好で、初期生育は順調に推移しています。

実体顕微鏡によるイチゴ花芽検鏡。花芽は大変小さく、針の太さが大きく見えます。奥はJA壱岐市のイチゴ担当者


 10月6日と10日にイチゴの検鏡を実施し、1番果および2番果のすすみ具合および、栽培管理指導を行いました。

 通常、10~11月に花が咲き、11月末から1月上旬(クリスマス時期がピーク)に皆さんが食べるイチゴが1番果、これ以降に店頭に並ぶイチゴは2番果、3番果と続いていきます。だいたい、九州の産地は6月中旬頃までイチゴを出荷し、恐らく5番果、6番果まで出ていると思います。
写真 右:実体顕微鏡によるイチゴ花芽検鏡。花芽は大変小さく、針の太さが大きく見えます。奥はJA壱岐市のイチゴ担当者。


 イチゴの花芽検鏡は実体顕微鏡を使用し、イチゴの苗の葉を一枚ずつ取りながら、やすりで研いだ針で花芽までの葉をめくって剥いでいきます。これで花が出てくる出蕾(しゅつらい)までの葉数(内葉数)と、花芽ができあがっているか(花芽分化具合)を確認することで、定植して良い時期、並びに出蕾、開花、収穫の時期がおおよそ予想できます。

1番果開花始めの圃場(10月10日時点)。マルチ被覆も終了し、これから交配のためにミツバチを導入、ハウスのビニル被覆作業が行われます。


 今回、検鏡した2番果は1番果の腋につくものであり、やや難しい作業です。恐らく全国の野菜技術者として、イチゴの花芽検鏡をマスターすることは大きな1歩であり、最初はかなり苦労すると思います。ある程度経験すれば慣れますが、それまでは失敗しながら習得するしかありません。これだけ科学が発達しているのですから、検鏡をせずに簡単な方法で花芽分化の確認ができる方法はないかと、ずーっと関係者で愚痴をこぼしてきました。
写真 左:1番果開花始めの圃場(10月10日時点)。マルチ被覆も終了し、これから交配のためにミツバチを導入、ハウスのビニル被覆作業が行われます。


 2番果の検鏡結果をもとに、追肥施用量や時期、マルチ被覆などの作業工程等の指導、および1番果から2番果までの収穫にかかる期間(2番果までの内葉数)の予想もできます。農家の所得向上のためには、いかに1番果と2番果の間が開かずに連続して出荷出来るかが、大きな要因となります。


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尾崎哲郎

長崎県壱岐地方局壱岐農業改良普及センターの技術課で野菜を担当しています尾崎哲郎といいます。離島ならではの普及活動や普及指導員としての苦労など紹介できれば幸いです。

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