提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


「野菜ソムリエ」の元気を作るおいしい食卓【42】

2017年06月16日

新品種エリンギ「濃丸(こいまる)」を訪ねて


野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター 田代由紀子   


 以前、セミナーで初めて口にした、エリンギの新品種「濃丸(こいまる)」。一般的なエリンギに比べてコリコリとした食感が強く、エリンギ独特の臭みのないおいしさに感動し、ぜひもう一度味わってみたいと、その開発を行っている『一般財団法人日本きのこセンター「菌蕈(きんじん)研究所」』を見学するため、鳥取県を訪ねました。


 菌蕈(きんじん)研究所とは、原木椎茸を始め、さまざまな菌類の研究、開発、栽培、流通、販売のための販促活動など、キノコに関する取り組みを幅広く行っている研究機関です。鳥取県でキノコの栽培研究が行われているのは意外な気がしますが、昭和22年(1947)に日本きのこセンターの前身として「全国椎茸普及会」が設立されてから、70年間もキノコの研究を行っており、「きのこ王国」として県産キノコのブランド化などに力を入れています。


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■新品種、プレミアムエリンギ「濃丸」
 エリンギは、ヨーロッパ原産のヒラタケの仲間です。定番のキノコとしてすっかり定着していますが、歴史は浅く、日本での栽培は平成5年(1993)から始まったそうです。
 太い茎を縦に割いたり、輪切りにしてホタテのような食感を楽しんだり、料理のジャンルも洋風、和風、中華風とさまざまな使い方ができる、使い勝手のよいキノコです。

 しかし、使い勝手のよさとは裏腹に、エリンギの栽培には、ほかのキノコと違った苦労があるとのこと。キノコは栽培中に胞子を飛ばしますが、エリンギは胞子の数が多く、シイタケの10倍もの胞子が飛散する特徴があるそうです。キノコの生産者がその胞子を吸い込んでしまい、「キノコ肺」と言われる呼吸器疾患を発症することが問題となっているとのこと。また、飛び散った胞子が壁や換気扇を汚し、カビの発生を招くなどの問題から、胞子のないエリンギの開発が始まったのです。

 新品種開発のため、胞子の有無だけでなく色や形、食感や味のよいものを求めて交配、選別を繰り返すこと15年。無胞子エリンギ「菌興PE1号」の開発に成功し、平成26年10月から販売が始まりました。翌年には名称を公募。多くの応募がありましたが、コロンと丸い茶褐色のカサをうまく表した「プレミアムエリンギ 濃丸」が、正式名称となりました。


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 「濃丸」は生産者に優しく、姿が美しいだけではありません。
 栽培に使う菌床にも「国内の山を守るための資源の活用」というこだわりがあり、国産杉のおが粉や国産の米ぬかを菌床や栄養源として利用しています(一般的には輸入トウモロコシの穂軸などが使用されています)。
 また、胞子がないことで、エリンギ特有のキノコ臭さが少ないことも大きな特徴です。このため、鳥取県内のスーパーでは、「こどももよろこぶ えりんぎ 濃丸」というシールが貼られて販売されています。


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 今回は、「濃丸」の生みの親とも言える研究員の奥田さんに所内を案内いただき、研究のために育てている「濃丸」を間近で見学し、収穫体験もさせてもらいました。ずっしりとした重み、エリンギを手にした時の弾力が、一般的なエリンギとの違いを物語っています。
 持ち帰った濃丸は、シンプルにバター醤油焼きに。繊維に沿って割いたエリンギをバターでこんがりと焼き、仕上げに醬油を垂らすと、きのこの香ばしい香りとバターの甘い香り、口に含めば、コリコリとした肉厚の食感が旨みたっぷりです。
 残念ながら現在は、鳥取県外での販売は少ないようですが、どこかで「濃丸」に出会うことがあれば、ぜひ試してみてください。

たしろ ゆきこ

野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。