提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


野菜

熊本市における促成スイカのIPM実証調査(熊本県 平成26年度)

背景と取組のねらい

 熊本市北部地域(熊本市北区)では、平成15年頃からウイルス病である瓜類の退緑黄化病が発生し、特にメロン、キュウリで大きな問題となっている。地域では、媒介するコナジラミ類の「入れない」、「増やさない」、「出さない」対策を進め、被害の軽減を図るとともに、地域でのウイルスの伝染環を遮断する取り組みを進めているが、既存の化学農薬だけでは害虫防除が困難な状況にある。

ipmH27_kumamoto_1.jpg スイカにおいては、野外にコナジラミ類が存在しない時期の栽培であるため、ウイルスの伝染環を遮断するのに絶好の時期であるが、スイカ退緑えそ病の経済的影響はメロンやキュウリほど大きくないため、害虫防除が手薄となる傾向がある。特に栽培後半になると茎葉が地表に密に繁茂するため、散布ムラも生じやすく、化学農薬を用いても防除効果が期待できない現状もある。
 そこで、平成25年度に抑制メロン及び半促成スイカ(平成26年春作)において、スワルスキーカブリダニ(以下、「SW」と記載)のコナジラミ類及びウイルス病に対する効果を試験したが、両品目ともその効果は判然としなかった。ところが、半促成スイカのアザミウマ類に対しては抑制効果が非常に高く、地域で問題となっているスイカ果実や葉の食害被害軽減に効果が大きいのではないかと考えられた(図1)。
右 :図1 スリップス類によるスイカ果実の食害

 平成26年度は、SWを10a当たり1本と平成25年度の半分にした上で、半促成スイカ(平成27年春作)におけるスリップス類の密度抑制効果及び経済性について検討する。加えて、昨年度、効果が判然としなかったコナジラミ類およびスイカ退緑えそ病に対する影響についても調査・検討を行った。

地域概要

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 熊本市は熊本県の県庁所在地であり、平成24年4月に政令指定都市に移行し、中央区、東区、西区、南区、北区の5区制をとっている。熊本市のスイカは、作付面積560ha、生産量16,719t、産出額44億円(熊本市農林水産業(平成25年度版))で、主産地は、熊本市北区の畑台地である。この地域には、JA熊本市及びJA鹿本の共販組織があり、それぞれ共同の機械選果・出荷体制を確立しており、消費地への安定供給に大きな役割を果たしている。
 当地域の半促成スイカの特徴としては、施設装備の有効利用や所得向上のため、1作目を栽培している株の脇に2作目を植え付ける「植替栽培(図2、3)」が広く行われている。

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図2 スイカ2作(植替)

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図3 スイカ2作(植替)体系図

展示ほにおける耕種概要と試験区の構成

●耕種概要
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●試験区の構成
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図4 極寒期の被覆

調査項目

●施設内の環境
 ・施設中央部の群落直上に「おんどとりJr.RTR503(T&D社製)」を設置し温湿度を測定
●微小害虫(コナジラミ類・ミナミキイロアザミウマ)の発生及びスワルスキーの定着状況
 ・粘着シート調査:ホリバー(青、黄)を施設内に設置、約2週間ごとに調査
 ・葉裏見取調査:10株×3か所(1株1枚)の葉裏の微小害虫及びスワルスキー頭数
●スイカ退緑えそ病の発病株率
 ・連続50株×2カ所の発病率を調査
●防除実績
 ・防除履歴より薬剤防除実績を調査。
 ・防除履歴より防除経費(SW経費を含む)を算出。

調査結果

●施設内の環境
 SWの夜温推奨温度は15℃である。試験区の平均気温は15℃を超え20℃前後で推移したものの、最低気温は15℃を下回る日が多かった(図5)。また、平均湿度は70%を超えていたものの、最低湿度はSWの活動可能湿度(60%以上)を大きく下回る日が見られた。

●微小害虫(コナジラミ類・ミナミキイロアザミウマ)の発生及びスワルスキーの定着状況
(1)粘着シートによる微小害虫調査結果
 コナジラミ類については、試験区及び対照区ともに期間を通じて付着はなかった。ミナミキイロアザミウマについては、SW放飼前の2月9日までは試験区及び対照区ともに微小害虫の付着はなかったが、試験区ではその後3月3日から付着が見られはじめ、5月28日に最も多い6頭/日・枚の付着があった。対照区では2月23日から付着が見られはじめ、4月7日に最も多い30頭/日・枚の付着があった(図5、6)。

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図5 微小害虫の粘着シート付着状況(試験区)

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図6 微小害虫の粘着シート付着状況(対照区)

(2)葉裏見取調査によるSW及び微小害虫調査結果
<試験区>
 SWは2月10日に放飼し、2月23日には定着が確認された。その後4月7日までは低密度で推移したが4月20日調査から急増し、試験終了まで1葉あたり1頭程度の密度となった。
 アザミウマ類については、4月20日以降、成虫・幼虫ともに見られ始めたが、どちらも1葉あたり0.4頭/葉程度までで大きな発生は見られなかった。
 コナジラミ類については、調査期間にわたって見られなかった(図7)。

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図7 微小害虫の葉うら見とり調査結果(試験区)

  <対照区>
 アザミウマ類については、3月23日以降、成虫・幼虫ともに見られ始め、その後急増し、最も多く見られたのは、幼虫が4月20日に13.6頭/葉、成虫が6月9日に3.8頭/葉であった。
 コナジラミ類については、調査期間にわたって見られなかった(図8)。

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図8 微小害虫の葉うら見とり調査結果(対照区)

●スイカ退緑えそ病の発病株率
 「スイカ退緑えそ病」の発生は、試験区及び対照区ともに調査期間を通じて調査株では見られなかった(データ省略)。しかし、植替終盤の5月下旬ごろから対照区の出入口やハウスサイド付近にスイカ退緑えそ病が見えはじめ、最終的には対照区ハウス内で3株の発病が見られた。

●防除実績
 農薬の使用成分回数(スワルスキー除く)は、試験区で19回、対照区で24回であった。このうち、殺虫剤の使用成分回数は、試験区で10回、対照区で15回であった。
 また、スワルスキーを含めた防除経費は、試験区で23,678円、対照区で24,867円であり、試験区は対照区比95%であった。(表19)

表1 防除経費
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考察

 SWの定着は、SWの放飼後、気温や湿度は好適範囲を外れる日が多くあったが、問題はなかった。これはスイカが地這いであるため地表面の温・湿度の影響を受けやすいためと考えられた。
 植替を伴う半促成スイカの1作目にSWを1ボトル放飼することで、2作目までのアザミウマ類の密度を抑制することができた。特に、アザミウマ類の幼虫の密度抑制効果が高いため、生育期間を通じて、成虫及び幼虫共に低密度で押さえることができ、茎葉被害も見られなかった。
 経済性については、スワルスキーを含めた試験区の防除経費は対照区と同程度であった。スイカ栽培の場合、農薬散布の可能な時期が決まっていることから、基幹防除が主であり、殺虫剤使用回数の低減は直ぐには行われにくいと思われた。
 スイカ退緑えそ病の防除効果は、昨年に引き続き効果は判然としなかった。
 以上のことから、コナジラミ類とスイカ退緑えそ病に対するスワルスキーの防除効果は判然としなかったものの、地域で問題となっているアザミウマ類については、防除効果及び経済性の両面でスワルスキーの導入効果は高いと考えられた。

(熊本県県央広域本部農林部 農業普及・振興課、熊本県農業革新支援センター)